ゲーム開発者が偉ぶるブログ

ゲーム開発のビジネスやマネジメントについて日々思うことをあれこれ偉ぶって書き綴ったもの。

部下を定時に帰す仕事術の感想1 工数割り出し

この土日に、佐々木常夫さんの著書「部下を定時に帰す仕事術」を読んだ。

部下を定時に帰す仕事術 ~「最短距離」で「成果」を出すリーダーの知恵~

部下を定時に帰す仕事術 ~「最短距離」で「成果」を出すリーダーの知恵~

 
部下を定時に帰す仕事術 (ポケット・シリーズ)

部下を定時に帰す仕事術 (ポケット・シリーズ)

 

この本では著者の経験談を元に、課長クラス向けに仕事の時間管理、ひいては会社員個人のライフ・ワーク・バランスと会社の成長について語られている。

ご本人が壮絶な人生を送られており、差し迫った状況を打破しながら実績を積み重ねて会社を登りつめていかれているが、大学時代での家庭教師の成功話からも、恐らく状況に関わらず能力の高い人であろうことが伺える。

非常に読みやすく書かれており、200Pほどというのもあって一気に読めた。

ゲーム開発にも当てはまることがいくつもあり、考えるきっかけになりそうなので何度かに分けて感想を書いてみたいと思う。ただし、読んで得たものを忘れないよう自分へのメモが目的なので、本書を読んでいない人向けの記事にはならないと思うのであしからず‥

 

作業見積もりについて

少し前に、ゲーム開発での見積もり精度の低さについて書いた。

偉そうに書いてはいるが、私自身が高い精度で見積もれるかというと全くそんなことは無い‥
本書では、佐々木氏が仕事時間を切り詰めないといけない状況に立たされた際、まずこの1年を振り返って、実際にかかった工数と本来の工数を割り出し「60%が無駄だ」と判明したと書かれている。

これは、振り返って分析しないと誰も気付かず年数を過ごしてしまうという恐ろしい話でもある。

そして、開発期間がタイトルによって非常に不規則なゲーム開発において「去年の今頃何をしていたか」や「この1年では何にどれくらい時間をかけたか」を工数を割り出すほど具体的に振り替えることはなかなか無いだろう。

例えリード職で無くとも、自分が過去に行った作業に対して振り返るだけでも、今よりも確実に一歩ビジネスマンに近付けるように思う。

ゲーム開発職は「芸術品を創造するアーティスト」であるかのような美徳が存在する。
それはプライドやモチベーションにも繋がり、大切な面もあると思う。
しかし、まずは予算と納期を守って売上を達成しなければ存続できないのも事実で、その足枷の中で力を発揮できる人こそが、様々なプロジェクトを経つつもずっと活躍し続けていけるのだろうと考える。

プロダクトアウトか、マーケットインか

メモっておく。

ゲーム開発においても、しばしば「自分たちが最高に面白いと思うものを作れば売れる」という考え方と「遊び手が求めているものを作れば売れる」という考え方での議論が行われることがある。

また何かの合間にでも考えてみたい。

ゲーム開発を効率化できないか?

ビジネス系の記事やツイート等でしょっちゅう見かけるのは「日本人はダラダラ長時間働いて能率が悪い」「無駄な会議が多く長い」「定時帰りを義務化したら改善された」「会議を無くしたら改善された」みたいな話だ。

これらはゲーム開発にも当てはまるのか?ということを考え始めたら考えが色々と多岐に及んだので、ひとまず開発そのものにおいて非効率な「あるあるケース」を列挙してみた。

 

と、その前に。

ゲーム開発と言っても予算を出すメーカー内製と、タイトル丸々請け負うディベロッパーとでは性質がかなり変わる。

私はどちらも経験しているが、それぞれに素晴らしい面もあれば、その立場が故に抱えている問題もある。

が、ここではその辺りの要素は置いておくとする。

 

さて、まずは何と言ってもスケジュールの見積もりがとにかく甘いことが挙げられるのではないか。

スケジュールの見直しは頻繁に行われる上に、タスク管理をシステム的に導入していない場合はタスクを後回しにしたまま忘れてしまうこともよくある。

普段から何にどれくらい時間がかかっているかの数字が残っていないといつまで経っても見積もり精度が上がっていかない。

 

次に、企画の全貌が明確になる前に量産体制に入ることが多いこと。

アルファ版は「試作品」を意味するとは思うが、主要な要素が一通り仮データであっても入っており「プレイしてどうかを判断できる状態」になっていなければならないように思うが、規模の大きいプロジェクトほどそうはいかない。

量産開始時に全体ボリュームがまだ不明瞭な状況だとしたらひどい話だ。スケジュール以前の問題なように思う。

 

また、作っては壊すというスクラップ&ビルドが日常的というのもあるだろうけれども、それが開発終盤にまで及ぶとなると問題だ。

壊さずとも、後から後から仕様の追加があるというのもよくある話だ。発売日が延びるというのはユーザーをがっかりさせることでもあり、延期が重なれば購買意欲を削ぐことになりかねない。また、開発が延びればその分開発費も増す。常識的に考えれば、仕様追加ではそのために発生するコストの分だけ販売本数が延びるなどにより回収できるという判断材料が必要なハズだ。

 

それから、基本的にコミュニケーション不足なために「実装してみたら意図と違っていた」みたいなことが、プランナーとグラフィッカー、グラフィッカーとプログラマ、プランナーとプログラマ間でよく起こる。単に連絡不足だったり相談が足りないだけだったりする。

それが重なれば若い子の場合は愚痴り出すようになり、ベテランの場合はどんどん不機嫌になっていってやがては要求を呑まなくなることもあるかも知れない。

 

そして最後に会議について。

これは確かに無駄に長い。

理由は明確で、直接関係なかったり意見を出さない参加者が多いこと、事前資料を読んで来ない人間が多いこと、会議で何を決めるか事前に明示してないこと、どんな問題や課題があるか事前に洗い出ししていないこと、会議の終了時間を明示していないこと、資料を読んでいない人間が多いので企画者がその場で読み上げて解説すること、企画者が実装時に想定していない点が多くて持ち帰って再考するケースが多いこと、実装難度が高い要求に解決策がスマートに出ずに進まないこと、などなど色々とある。

 

今ざっと挙げたものは、何もディレクターが悪いとかリーダーが悪いとかを言いたい訳ではなく、その状況を認識しながら解決しようとしないチームになっているとしたらそれが問題なのではないかと言いたいのだ。

立場的に言えないことも多いと思うが、可能な範囲内で努力することはできる。

もしこれら一つ一つの問題に対してきちんと向き合い、具体的な策を練って解決しようと行動と振り返りを重ねるチームになれば、解決されてゆくことも多いのではないかと思うのだが。

果たして。

分業について

ゲーム開発は分業体制で行われる。

同人ゲームであっても、絵も音楽もプログラムも分担しないで作るケースは珍しいだろう。

家庭用ゲーム黎明期はプロデューサーやディレクターは存在しなかったかも知れないが、今は必須の役職と言える。

業界全体的に最も細分化されているのはグラフィックデザイン職だろう。

昔は比較的ジェネラリストが好まれる傾向だった気がするが、PS1〜PS2と盛り上がっていくにつれスペシャリストとして特化していく傾向になり、3DSあたりから家庭用ゲームに陰が落ち始めるとともにまたジェネラリストが求められるようになってきたりとその時々での風潮みたいなものを感じることがある。

仕事場ではジェネラリストであることを求められているのかスペシャリストであることを求められているのか、また自らはどのように立ち回りたいのかは、キャリアパスにおいて重要な要素でもある。

例えば、今ZBrushを極めたいと思ったとして、そのスキルが活かされるであろうハイエンドタイトルで実際にどれくらい需要があるかは先も含めて見通しながら考えたいところだ。

というのも、スカルプトを含んだアセット量産はアウトソーシングするケースが増えている傾向にあるからだ。

勿論、アウトソース先に指示を出してチェックするにはある程度の技能と知識が必要だろう。ただ、重要度の点では必要最低限で良いとも思える。

少なくとも自分がやりたいことについて考える一方で、どんなスキルを磨けば食いっぱぐれが無いかは常に考えておきたい。

さて、分業するからにはある程度スペシャリストとしての働きを求められているのが基本前提になるだろう。

それは、逆に言えば「担当外の領分には口出し無用」という空気にも繋がり、それが悪い方面に進行するとやがて「担当外のパートに対して無関心」という状態になる。

そうなると「それは私の仕事じゃない」という、所謂「お役所仕事でたらい回し」みたいな状況になる可能性がある。

ディレクターによる統制やリード同士の連携が上手くいっていれば、チームが縦割りになる状態はそれほど問題にならないかも知れないが、そこが上手くいかない場合も多いような気がする。

しかしそれは統率者達の不備の問題であって、組織としては基本的にはスタッフは求められる業務を淡々とこなしてもらいたいところだろう。

しかし作業要員という状況にただ甘んじているだけだと、足切り要員にもなる。

なので、リード職で無い場合にはスペシャリストやジェネラリストとして己を磨きつつ、日々の業務の中でスキルを発揮していくべく心に留めておきたい。

色々水平思考というブログが面白い

私は任天堂ファンでもあるが、このブログの管理人に比べればそれはもう随分とライトなファンになってしまうだろう。

引用されていたり紹介されていたりする記事には知らないものが多くあった。
中でも「ほぼ日」のポケモンスナップの開発秘話は強烈だった。
 
ゲーム業界内では「任天堂は謎に包まれている」「どんな会社かよく分からない」という話をよく聞く。
確かにCEDECや各種勉強会や懇親会といった交流のある場で任天堂の人は非常にレアキャラな印象がある。
だが私は任天堂ほど、どんな会社か赤裸々に語られている会社は他に無いんじゃないか?と思う。
理由の一つが「ほぼ日」や「社長が訊く」の存在で綴られる、意外なほどまでに赤裸々に語られる内情話だ。どんな部署があって、どんな苦労があったのかが多面的に語られている。
逆にこれほど内部事情について語られている会社は他にあるだろうか?
ナムコが、カプコンが、コナミが、スクウェアが、フロムソフトウェアが、どんな部署があってどんな人達が働いていて‥ということを様々なタイトルで語られていたりするだろうか?山内社長や岩田社長は様々な逸話が開発者層にも知られているが、他の会社はどうか?
また、任天堂の場合はハードメーカーでもあり、家庭用ゲームビジネスを語る際の核になる存在なため、その経営学についてビジネス本にまとめられていたりもする。
宮本茂氏の取材内容が取り上げられている書籍もいくつか見かける。
ポケモンに焦点を充てたビジネス本も何冊も出ている(こちらはゲームフリーククリーチャーズが主な取材先ではあったりするが)。
任天堂 “驚き”を生む方程式

任天堂 “驚き”を生む方程式

 
ゲーム・オーバー―任天堂帝国を築いた男たち

ゲーム・オーバー―任天堂帝国を築いた男たち

 

任天堂の歴史について詳細にまとめられたサイトもある。

失敗談等の生々しい話の大半が「ほぼ日」からの情報ではあるけれども、任天堂という会社がどんな文化を持ち、どんな部署があり、どんな苦労の中で作品が生まれているのかは多くの文献が存在するのだ。
 
しかし、それらを色々と読んできていたつもりだったが、ポケモンスナップの記事は初めて読んだ。
岩田聡氏と宮本茂氏の発言はかなりストレートなものになっており、オブラートに包まないその内容は、チームを見守る上層レイヤーから現場に対して期待だけでなく失望も含め正直に語られている感じで、純粋にとても参考になる。
彼らが発言しているように、現場のスタッフには上層レイヤーの思惑など「知る由もない」のだ。だからこの記事はとても貴重なのだ。
ただジャックと豆の木チームに関しては、上のレイヤーとして何を求めていてどういう意図で発言しているのかをもう少し現場に説明するということは無かったのかなと思ったりするのだけど、それだけ当人の自由な開発を尊重したものだったのか。
それから、欄外のスタッフの一言一言が非常に生々しく苦味が感じられる。
これを読んだ後MOTHER3の開発中止のお知らせを読むとより気分が落ち込む。
 
それから、対談の中で岩田氏の「プログラマーはできないと言うな」発言が一人歩きしてしまっており嘆いている点に触れられているが、宮本氏の「ちゃぶ台返し」も同様なのだな、と思った。
この記事とMOTHER3の記事からは、宮本氏が物作りに対していつも真剣勝負であり、覚悟と責任がある、そしてそれが「当たり前だろう?」というオーラが漂う。
現場での氏は、メディアで見かける「ニコニコしている優しそうな人」ではないのだ。
 
話が逸れた。
 
色々水平思考は面白い。
こういったゲームデザインについて解析したり推測したりといったことは、現場でこそ熱く語られて欲しいものだ。
最近の若いゲームデザイナーな人達は、ゲームデザインについて熱く議論したり意見を提示したりしているかい?

起業リスク

起業リスクについて、参考になりそうな記事を貼り付けるエントリーはこちら。

非常に興味深い。
何にどれくらいのお金をかけてどれくらい効果があったかが具体的に述べられていて非常にありがたい記事だ。


先日「ゲーム開発者の副業について」という記事内で、年収アップには起業が手っ取り早いみたいなことを書いたが、ゲームを制作するとなると話は別だ。

何せ既存IPの無いゲーム制作はギャンブルなのだから。

だが、やりたいことがあり、夢があるということは人生において非常に重要なことだと思う。

 

とても具体的な話でありがたい。

オススメとして挙げられた書籍もリンクを貼っておく。

成功者の告白 5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語

成功者の告白 5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語

 
追われ者―こうしてボクは上場企業社長の座を追い落とされた

追われ者―こうしてボクは上場企業社長の座を追い落とされた

 
社長の教科書―リーダーが身につけるべき経営の原理原則50

社長の教科書―リーダーが身につけるべき経営の原理原則50

 

ゲーム会社の残業と裁量労働制について

後に調べるためのメモ書き。

現時点ではちゃんと調べていないので大変テキトウな内容になる。

 

裁量労働制とは、実際に働いた時間に関わらず一定の時間(8時間とか)働いたこととする制度で「働く時間はお任せします。だけどちゃんと成果を出してね」というものだ。

実はこれは適用できる業種が決まっており、ゲーム開発職は裁量労働制が導入可能な業種となる。

ただ実際のところは「○○時には出社するように」といったルールが定められていて出勤時間が自由にはならず、とても早い時間に退社できる仕事量ではない上に、残業代は支給されないという、労働者側にとっては何の意味があるのか疑問な制度でもある。
(ただし深夜時の割り増し分や休日手当は支払わないといけないハズ)

実質的には企業側を救済する法律になっているように思う。
残業代を支払っていたら会社が傾くかも知れないからだ。

ただ、そもそも定時時間で終わらない量の仕事を発生させ続けている側に問題がある。
ゲームタイトルの売上見込みに対してコストをかけ過ぎていないか?今一度しっかり考える必要がありそうだ。