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ゲーム開発者が偉ぶるブログ

ゲーム開発のビジネスやマネジメントについて日々思うことをあれこれ偉ぶって書き綴ったもの。

開発者視点での「NieR:Automata」プレイ感想

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PS4専用タイトルの「NieR:Automata(ニーアオーオマタ)」をとりあえず3周クリアしたので、その感想をつらつらと書いてみる。

前提としてシリーズのプレイは本作が初めてで、ヨコオ氏のファンという訳では無く過去作の知識も全くない。メインキャラクターが吉田明彦氏のデザインでありプラチナゲームズ開発のアクションであることがプレイ動機として大きく、発表からずっと楽しみにしていた。

素晴らしいことに、国内の売り上げ本数が初週で20万本近い。

 

さて、大量に書くことはあるのだが、クリア後に振り返ってまず感じるのが、大神・ベヨネッタヴァンキッシュメタルギアライジングといった過去タイトルの様々なアイデアやノウハウがぎゅっと詰まったタイトルだという点だ。

プレイ中の様々な場面でそれらのエッセンスを感じ取れる。

例えばダッシュ後に徐々に加速していく高速移動は大神から受け継がれる非常に気持ちの良い移動アクションと言える。最高速の疾走感は素晴らしい。

そしてたったこれだけのことでも、移動効率が良いためひたすらダッシュを繰り返して移動するという不恰好なプレイスタイルになりがちな他タイトルと、大きく差が出ている部分に思える。

剣戟アクションの切れの良さはベヨネッタメタルギアライジングでも素晴らしいし、本作は武器のしまい方やちょっとした仕草など細かいところまでとても丁寧かつ凝って作られている。

時間がスローになった中でのアクションはビューティフル・ジョーから始まり、ベヨネッタヴァンキッシュといったプラチナ製タイトルでは定番であるが、スロー中にさらに攻撃をさけてスローを継続するようなこともできる。

そして回避アクション直後でもすぐに連続で回避可能な点が、戦闘での立ち回りをとても触り心地の良いものにしている。

スタミナが無いのも良い。ダッシュ、攻撃、回避に制限が無く、攻撃も小剣弱>小剣強のように組み合わせによっては永遠に続けられてとても気持ちが良い。ボタン押しっぱなしでも専用のコンボが用意されていたりも悪くない。アクション面ではストレスを無くして気持ち良さに特化しているように感じる。

走り始めやターンや停止、コンボの繋ぎのアニメーションも非常に自然に遷移する。

EASY モードでのオート操作による優雅な攻撃と回避もベヨネッタから受け継がれて進化したものに感じるが、ここにはCEDEC等で度々語られている自動デバッグのノウハウが活かされているのではないだろうか。


他にも、絵本イベントではベヨネッタでフィルムエフェクトが入ったカットシーンを彷彿とさせる。

そういったプラチナエッセンスを多分に感じたという点の他には、本作では特にカットシーンのカメラワークやキャラクターの演技がとても良くなっており、洗練されていると感じた。2Bが振り向くただそれだけの演技でも自然で感心させられる場面があり、また飛行ユニットが飛び立つシーンなどのカメラワークも良い。

そんなカットシーンの中でも特に、キャラクターにトドメを刺す残酷なシーンでのトドメの刺し方や演技がとても良かった。特にイヴのシーン。残酷さを強く出しつつもあっさりとシンプルに、嘘臭くなくまとめている。血飛沫もそこに華を添えており非常に美しい。

一方でフェイシャルアニメーションは誇張気味でやや不自然な感じはしたが、アンドロイドであるという設定からわざとそうしているのかも知れない。どちらにせよそこはマイナスではなく意欲的に感じて好感を持つ。

エフェクトも非常にクオリティが高い。
プラチナゲームズの作品はエフェクトが非常に良いのだ。特に大神、ヴァンキッシュメタルギアライジングは洗練されている印象があったし、最近だとProject Re:LINKのトレーラーも非常に良かった。

本作では60fpsでオープンワールドであることを考えるとリアルタイムで半透明にライティングはしていないだろうが、それでもライティングされているような自然な見た目の煙が出ている。炎や爆発もボスの爆発シーンなどでは派手にしつつも品質を保っており、これは地味にすごいことであると思う。

またデパートの廃墟や森にある、透明な部分と反射が自然に表現された滝も美しく、背景とマッチしていて感心させられる。Witcher3のような最上なグラフィックの海外タイトルでも煙や滝の表現などはおざなりに見える品質だったりするのだから。

雷はシェーダーだろうか。滑らかで千切れ方も自然だ。
随所で使われているGPUパーティクルの散り方も美しい。
死体から回収した際のデジタルエフェクトも格好良い。

UI は全体的にシンプル過ぎて安っぽく感じた。

ハッキングの演出からもあえて懐かしいオールディなデジタルテイストを含めているのは見てとれるのだが、メタルギアソリッドシリーズのような洗練されている印象ではなく、ゲームボーイのゲーム画面のようなチープさをどうしても感じてしまった。
同様にインゲームでカットシーンに入る時の半透明の黒帯はもう少し安くない感じになったら良かったように思う。

一方でハッキングした瞬間の演出は非常に格好良い。

それから、プレイヤーの調子が悪い状態の時にUIに乱れが生じる演出などは拘りを感じさせる。さらに悪化した時の演出で昔のゲーム画面風になるのは世界観にはやや削ぐわなく感じたものの面白いアイデアだ。

カーソルが1フレで消えるのではなくフェードアウトで消えるのも地味に良い。
ノベルパートではこういった細やかな所作が没入感に一役買っている好例に思う。

サウンドは‥どれもこれも「素晴らしい」の一言に尽きる。
この世界を一層魅力的にしている。

中でもフィールドの曲が、なぜだかFF11のフィールドの曲を彷彿とさせて胸が熱くなった。広大な世界を旅しているような、広大な中に一人でいるような、そんな感傷に浸れる曲調なのだ。

一方で重要なシーンやボス戦を盛り上げる曲にも聞き惚れてしまう。機械生命体の「コノママシニタクナイ」のセリフが入った曲も印象的だ。

ハッキングパートで曲が8bitサウンドになるのも凝っている。これは、かなりの曲数を対応しているのではないか…。しかもハッキングをクリアすると終わって残念に感じ、そのまま聞いていたくなる出来の良さだ。

キャンプメニューを表示した時のサウンドも、他のゲームのようにただ音量が低くなるだけでなくとても「良い感じ」に籠ったエフェクトが入っている。

表面的にグラフィックを見れば、モノトーンカラーな色調の上に密度が少な目の殺風景な風景が続き、地味に見える。建物など作り込みもかなりアッサリだ。

だが色調はシリーズを踏襲したものであろうし、60fpsで広大なマップをこれだけ高速に駆け抜けることができる状況を鑑みると、同業者として非常にうまい落とし所に感じて感心させられる。

しかもプラチナゲームズのことだ、恐らく少人数・短期間で製作したであろうと推測する。そしてもし実際にそうだとしたら感服する。

もう少し背景について感想を言えば、恐らくPBRを導入したであろう背景アセットの質感に統一感を感じた。特にスペキュラの入りが自然だとPBRかなと感じる。

また、カラーグレーディングによりパンチの効いた画作りになっているロケーションは非常に良い。逆にコントラストの低い色調のロケーションは地味に見えてしまっていて勿体無く感じた。一部の完全にモノトーンの世界は世界観にもマッチしておりアリだと思う。

砂漠からも遠くにうっすらと建造物が見える空気感、逆光時の眩しさはとても良い。

キャラクターは吉田明彦デザインというのもありデザインとフォルムが素晴らしいが、3Dモデル化にあたってはお尻から太ももの肉感がとても良い。

キャラクターのモデルのクオリティも高いし武器の装飾がまたしっかり作り込まれている。キャラクターをカメラ間近でじっくり見たいがプレイヤーキャラに対してカメラは近付くとキャラを左右に避けてしまうし、うまく近付けてもすぐにフェードが入ってしまうのがとても残念だ。

キャラクターのデザインとモデル、モーションの良さと機動力の気持ち良さから、ただ走っているだけで、2Bの挙動を見ているだけで楽しいし没入してしまう。
そしてアクションの手触りが本当に素晴らしい。

 

さて、ここからは気になった点を粘着していく。
ネタバレが多分に含まれるので注意して欲しい。

まず一周目のストーリーの薄っぺらさと物足りなさはとてもいただけなかった。
周回前提としても、続きが気になるくらいに引き込んで欲しい。

先程も書いたようにアクションの手触りの良さが故に、広大なフィールドの探索やお使いクエストを繰り返すことにも楽しめたが、「物語の先が知りたくて早く続きをやりたい」と思わせるような進行モチベーションは、意外にも低めのタイトルだと感じた。

これは和製オープンワールドにありがちなのかも知れない。FF15も「オープンワールド部分は楽しいが物語は残念」といった評価をよく目にする。ゲーム部分で楽しくさせるのが日本は昔から得意としている分野なのだろうが、今もそれは変わらないのか。

物語としてはヨコオ氏の作品は鬱展開で有名なように聞いてはいたが、少なくとも本作では別段そう感じるほどでもなく、全体的にかなりアッサリとしていて私には物足りなく感じたが、ただ世間的にはこれが丁度良いくらいだろうかとも感じる。

それから、物語同様に世界観を大事にしてそうなタイトルの割に設定が薄っぺらい感じが拭えない。

例えばヨルハ部隊が感情を出すのを禁止されている設定とはとても思えない。戦闘に高揚している感じもしない。

アンドロイド達はあまりに人間臭すぎてアンドロイドであるという感じがせず、人類が特別な存在に感じない。

また、物語の真相を知っている人物にそれらしき深みを見せてくれるシーンが無い。

機械生命体を頑なに感情が無いと語らせるのにも納得できるだけの掘り下げが欲しい。
実際に感情が目覚めたというようなことが周回イベントやアーカイブで語られていたりもするが‥

そして開発コストの問題があるにしても、バンカーが世界観的に小さすぎないか?
キャラクターが入れなくて良いので居住区をもっと広く見せる工夫はなかったのか。

バンカー同様、地球の世界もまたこじんまりとしている。お城と団地と遊園地とデパートが隣接し合う状態が、どうしてもチープさに繋がっている。こういうところはゲームとして割り切る部分だとは思うのだが、世界観や設定を大事にしているようなタイトルだとそういった細かいところがどうしても気になってくる。

それから、一周目中盤で「ようやく転送できるようになった」という転送装置がエロ本の自動販売機が何百年も経ったかのような古びたデザインなのはどうなのか。レジスタンスキャンプにあるようなちゃんとした綺麗な装置に差し替えた方が良かったのでは。
また、転送時にはこのエロ本自販機のどこに義体を保管しているのか‥。

そして、未来での舞台というよりもオールディで8bitなデザインで世界を彩っているのはヨコオ氏の趣味かも知れないが、世界設定と合っていない違和感がある。

そう、リアルおっさん世代にとって非常にオールディで懐かしい印象を随所で与えてくるゲームなのだ。例えばバンカーやレジスタンスキャンプのNPCのセリフはSFC時代のRPGのようなチープさだ。数の多いちょっとしたバッドエンドはゲームブックを彷彿とさせる。8bitサウンドもそうだ。BGMを聴ける場所やデバッグルームがあるというのもSFCや初代PSあたりの時代を思い出させる。

これらは確かに私にとっても懐かしさがあり決して悪くない感触ではあるが、違和感があるというのも事実だ。

また一周目で入念に探索してハッキングが必要な宝箱や扉が沢山出てくるが、二周目にもう一度隅々まで探索しないといけないのかと思うとゲンナリした。
Amazonレビュー等で一周目と二周目は統合して欲しかったという意見をいくつも見かけたが、これは同感だ。どう融合させるか考えると難しいとは思ったが、一周目の密度はもっと高めるべきだ。そして二周目を後日談にして真相が判明する、というのがやはりシンプルで良いように思う。

それからアクション面では…

全体的にボス戦が面白くない。特に人型ボス。

こちらが二体 + ポッドの攻撃によるエフェクトが常に炊かれるため、アダムやイヴやA2が近接攻撃を行ってきても見えないので反応し辛い。エフェクトは良い意味で控え目なデザインになっているものの「視界を覆う」という面では結構凶悪でストレスに繋がっている‥。

そうするとどうしても離れて射撃、または衝撃波を飛ばすか大剣のダッシュ攻撃のように武器を投げる攻撃ばかりで立ち回らざるを得なくなり、戦闘が単調になりがちだ。

ただし、オペラのボスは非常にわかりやすい「ボスらしい」攻撃と、また攻撃の多彩さがとても良かった。そういう意味では廃工場で戦う丸い玉のボス(初戦)も良かった。

ボス戦で気になったものとして、一周目最後のイヴ戦で浮かぶ岩に乗れるようになる場面があるが、ここは完全に調整不足ではないか。非常に乗りにくい配置になっており、ようやくなんとか乗れた頃には攻撃が終了する。こういった足場は特に3D視点のゲームだと乗っているのを持続させるだけでも大変で、乗った上でアクションさせないといけない遊びを提供するとなると、少なくとも足場に乗ること自体はもっと簡単にすべきだ。

ザコに関しては、どれも同じようなデザイン、攻撃の敵ばかりでやはり単調に感じる。
もちろん世界観の統一と制作コスト面の両方の意図があるのは理解できる。

武器がかなりの数に及ぶ割には、敵のバリエーションやゲームボリューム面からも、それらを堪能するまでに至らないのがとても勿体ない。
例えばダークソウルなんかは武器に豊富な種類があるものの、その使い分けを試したくなるだけの深みがちゃんとゲームにはある(対人戦を除いたとしても)。

ゲームシステムとしては、デモンズソウルやダークソウルのような、非同期ネットワークを利用したシステム(死体回収)や死んだ場所に大事なものを落としてロストのリスクがあるというシステムが存在するが、どちらもおまけ要素的としか感じられない。
いや、それだけならまだしも、低コストのチップを合成して揃えた貴重なチップ群が一気にロストされるというのは理不尽にもほどがあるように感じるがどうなのだろうか?(ロストしたことは一度もなかったのでロストは未経験だが)
本作の場合はオートセーブでは無いのでセーブからやり直せば良いだけ‥と言えばそれまでではあるが‥

シューティングパートはかなり長い上に単調すぎる。
いや、シューティングパートそのものは含まれていても良いのだが、飽きさせない工夫がもっともっと欲しい。

それからハッキングパート。

ボスクラスのハッキングはイージーモードではもっと易しい調整にすべきだったのではないか?
難易度によって各種調整を変えるというのは開発側にとってはデバッグコストが大きく増して地獄を見る要素でもある。そのため敵の攻撃力の倍率を変えるなど一律でシンプルな調整に留めるのがセオリーとなっている。
‥が、少なくともイージーモードでのハッキングパートでは、弾の速度・弾の発射間隔・紫弾の発射間隔・敵のHP・自機の耐久‥あたりをグっと易しめにする必要があったのではないか。
EASYモードにしたところで救済になっていない、何度もリトライさせられうる場面があるというのは大きな問題だ。

ハッキングには非常にイライラさせられ、ストレスをただ高める存在になってしまっているのが勿体無い。

また、右スティックで弾の向きを変えられる説明はもっと明示的に行って欲しいと思った。ヘルプにも書かれてはいるが、かなり後になって知ったので二周目に非常に苦労した。

横スクロールや見下ろし視点のパートもゲーム中のアクセントとしては良いのだが、カメラを引きすぎて何が起こっているのか全然分からない。

特に大剣を振りまわしていると、ボタンを押してから振り下ろすまでのディレイが長くてこの視点では把握が辛い。それは一周目のA2戦程度のカメラの引きでさえも、似たようなシルエットのキャラ3体が動きまわるので何が起こっているのか非常に分かりにくい。

それからマップ上に置かれた箱を押すアクションの移動速度が遅すぎて非常にイライラする。倉庫番クエストや正宗手前などで見かけるあれだ。特に正宗はその場所に行く度に元の位置に戻っているため煩わしい。重たさを演出したいのは分かるがこれはやり過ぎに思う。

ハシゴの登り降りがかなりダルい。特にパスカルの村なんかはレジスタンスのキャンプ奥のようにハシゴ脇からストンと降りられるようにして欲しかった。いや、二段ジャンプで上の段に登ったり、手前にレバーを押してジャンプすれば降りられるような、横視点専用アクションが欲しいところだ。

UI 面ではロード画面で最後にプレイしたセーブデータが選択状態になっていないのが地味ではあるがストレスが溜まる点だ。

それからチップをOS以外、一度に全て外す操作が無いのも不便。

また、スキルセット1~3を移動・バトル・ボス戦と場面に応じて手早く切り替える操作が無いのも残念。タッチパネルで切り替えられるべきなのは、十字キーで簡単に切り替えられる武器やポッドではなくこちらではないのか。むしろ武器やポッド切り替えは十字キーと重複していて紛らわしい。バトル中に時間を止めてゆっくり選択したい(回復したい)というユーザー向けの親切な操作‥という点は理解できる。

3週目に9Sのバイタルが悪化してもロード画面中の「バイタル グリーン」と出るのはどうなのか。ロード画面での演出が適当に文字を羅列しているだけという印象をより強くしていて残念だ。

あと初回特典のPS4のテーマがなぜ飛行ユニットなんだ。
PS4のニーアオートマタの詳細画面で表示される背景の2Bと9Sが佇むコンセプトアートや、ローディング時に表示される9Sがビルに立っているコンセプトアート、または大型二足ロボと2Bが向きあうコンセプトアート、または2Bと9Sが敵に囲まれているものなど、素敵なアートが色々とありそちらをこそ背景に飾りたいのに‥

 

‥と、色々と細かい文句を沢山挙げてはみたが、トータルでは非常に良く出来たアクションゲームに感じ、三周ともかなり楽しめた。満足のいくタイトルだった。

今後のプラチナゲームズ開発タイトルにも期待せざるを得ない。