ゲーム開発者が偉ぶるブログ

ゲーム開発のビジネスやマネジメントについて日々思うことをあれこれ偉ぶって書き綴ったもの。

ゲーム業界の守秘義務の境界線

日本のゲーム業界は閉鎖的だと感じる。

まだまだ業界全体的に、会社間での交流、ノウハウの発信等に対する否定的・懐疑的な空気があり、そのため業界で働く人にとって交流や発信には抵抗感が生まれている。

会社によっては他社の従業員との飲み会が禁止されている。

勉強会は見知った同士でクローズドで行わないと発言や発表がやりにくいし、開催自体が難しい。

だがそれは裏を返せば自分達が自分達を信用していないことに他ならないように思える。

他社の人間と飲めば社内事情をネガティブに語り、SNSでは匿名なのを良いことに「今日、仕事であった出来事」などそれとなく発信してしまう、そういう事例が後を絶たない事実がある。
(匿名というのは案外脆い。HNの正体を明かしている相手がいれば知れ渡る可能性があるし、告知系ツイートのRTやフォローしている中に社名を出しているアカウントがあればそれでなんとなく想像できてしまうものだ)

それだけではない。

パブリッシャーにはパブリッシャーの、ディベロッパーにはディベロッパーの守秘義務の壁が存在する。

パブリッシャーはちょっとした情報漏洩が株主や株価に大きく影響する可能性がある。新しいハードの情報や新作の大型タイトルの情報ではリーク情報が飛び出すことも日常茶飯事で、蓋を開けてみれば実際にリーク情報の通りだったりすることも多い。

ディベロッパーはパブリッシャーの許可が得られないことには開発情報を出せない。未だに社名を出したくても社名すら出せないケースがある。反対に守秘義務を固く守ることをクライアントへのアピールポイントとしていたりもする。そのため守秘義務に過敏になるのもやむを得ない面がある。

そんな中で「じゃあ何もかもが守秘義務なのか?」というとそんなことは全無い。
境界がハッキリしていないから「何も言わないことが一番安全だ‥」という保守的な状態になっているだけに思える。

そこでまずハッキリさせたいのは、開発中であり未発表であるハードやタイトルの内容について触れるのは完全にNGで、それは誰にとっても当たり前と分かっていることだ。今開発しているタイトルの物語はこうで、こんなキャラが登場して‥みたいな話をして良い訳は無い。
とは言えすでに一般公開されている情報なら当然問題は無い。関わっているタイトルについて社外の人間に話す際には、何がどこまで公開されているかをちゃんと把握しておく必要がある。

次に開発環境。開発体制やワークフロー、使用ソフトやミドルウェアなどは守秘義務に触れるカテゴリだ。信頼できる人間関係の中で、クローズドな場で情報交換として話し合う分にはどんどん行えば良いと個人的には思うが、一歩間違えると問題になる可能性もある。
そして、この時考えないといけないのが単なる愚痴やチーム批判になっていないかということだ。そういったやり取りで得た情報をちゃんと業務に活かせるのか、よく自問した方が良い。

それから、一般的に入手可能なツールやゲームエンジンの仕様・使用方法・ちょっとしたTIPSなどをまるで「弊社独自のノウハウ」かのように「秘匿した方が良いのでは」と考えてしまうのは完全に間違っていると感じる。例えばUnityを開発で使用していて、開発スタッフが匿名のHNを持つSNS上でUnityのちょっとしたTIPSを公開していたとして、そのHNが同じチームのスタッフと知っている場合に「これ大丈夫なのか?問題なのでは?」とすぐに考える人間がいる。
こういう時「本当に日本国内の開発現場は面倒臭いな」と思わざるを得ない。

情報発信する内容の何がチームとって問題があるのか、クリティカルになる可能性があるのか、そういったことを考えた上で問題と感じているのか、よく考えて欲しい。
はっきり言って、職人気質な日本人スタッフが「秘伝のタレだ」と思っていることの多くのTIPSは海外サイトに普通に転がっている。単に世間知らずなだけの場合が多いというのが私の実感だ。
(ただし所属企業や本名を明かしてSNSで情報発信する場合は、細心の注意を払う必要があるとは思う)

CEDECのような会社を通して発表するような場だけでなく、個人単位の勉強会やSNSでももっと開発手法や技術情報について活発にやり取りされる世の中になっていって欲しい。