ゲーム開発者が偉ぶるブログ

ゲーム開発のビジネスやマネジメントについて日々思うことをあれこれ偉ぶって書き綴ったもの。

従業員を雇うということ

従業員を雇うということを考えてみる。

会社が存続し続けるとして一人雇うと総額4億かかるという前提で。

 

ちょっと待て。

そもそもなぜ4億なのか?計算してみる。

 

人件費を月100万円で換算すると年1200万円。

24歳から60歳まで雇ったら36年間。

4億3200万円だ。

 

小さい会社だと人件費を月100万で計算するのは多いかも知れないが、雇用し続けるのにはとてつもなくお金がかかることはよく分かる。例え月50万で計算しても2億超えるのだから。

さて、だからと言って人件費が高い高いと嘆くのは違うと思う。個人単位ではなく企業単位で考えると、サラリーマンの日常での金額とは桁が違ってくるというのは当たり前の話だ。そして従業員1人につき月100万円かかろうとも、従業員が「平均」月100万円以上稼いでくれれば問題無いということだ。

人によっては200万を稼ぐ者もいれば全く稼ぐことができない者もいるだろう。例えば新卒の子がプロジェクトに入ったもののクオリティに達さず作り直ししていたら一ヶ月過ぎてしまったというようなことだってあるだろう。

そこは育てていくための投資ということになる。稼ぐ従業員が稼げない従業員をカバーして会社が回る訳だ。そして大きな会社は色んな部署がお互いをカバーし合う。健康保険もそうだし、色んな場面でそうやって成り立っている訳だ。

だから「平均」月100万円「以上」稼いでもらうのだ。

 

しかし、ここでリスクというものも考えないといけない訳で。ほとんど会社に貢献できない人材や、それどころか職場に損害を与える人材もいる場合もあるだろう。会社のイメージダウンを引き起こしたり情報を外部に漏らしたり周りの従業員のモチベーションを下げたり、色々なケースが考えられる。

そういう時に、日本の法律では辞めさせることが簡単にはできない訳か。そうすると、非正規雇用したくなるということか。また、自分から辞めてくれるよう希望退職者を募ったりする訳か。ふーむ。

 

すると、いかに稼ぐ人材に育てて、モチベーションを維持させるか‥ということが命題となる。営業方面ではいかに良い仕事を取ってくるかということや資金繰りなど色々あるだろうが、従業員に対してはその2点が重要だろう。

ただ、ゲーム業界は人を育てるという面では恐ろしい程に未熟な業界に思う。基本的には簡単な仕事から与えて先輩がチェックし、その中で学んでいくというスタイルがほとんどのような印象がある。このこと自体は良い。ただ他に育成要素が何も無く基本放置というケースが多い印象なのだ。この場合、育成の成果はチェックを担当する「先輩」次第でもある。キャラクター、背景、エフェクトといったようにセクションが分かれている中規模以上の現場では、教育は各セクションリーダー次第だ。そしてリーダー自信は長年の実務経験はあるかも知れないが人を育てる能力は人によって大きく差があるだろう。そこを埋めるよう取り組んでいるような会社の話を聞いたことがほぼ無い。新卒者向けの薄い研修マニュアルが用意されていて1~3週間ほどの研修期間があるという程度のケースをよく聞く。

また、モチベーション維持という点ではそこを重要視して対策している話というのもあまり聞かない。ここは適材適所であったり、ビジョンやゴールの提示であったり、当人に正当だと思わせる評価の実施であったり、適度な挫折と適度な成功体験であったり、報酬とのバランスであったり、人間関係のケアであったりするだろう。ゲーム業界でこのあたりについて事例を挙げながら深く語られるようなことは滅多に無い。軽視されているということだろうか?

経営者や上層部の方ではそういったことは人事部やコンサルタントなどと話し合いながら日々色々と考えているのかも知れない。ただ、現場の管理職‥ディレクターやリーダーといった立場の人間に、管理職のイロハをちゃんと教えたり、指導者として育てていくよう工夫しているような話はほとんど聞いたことがない。

なので、誰かが教育やモチベーション管理について勉強しながら実戦して、失敗例や成功例をどんどん伝えていくしかないだろう。

自分もまたその一端を担いたいと思っているのだ。